Chansons de geste ~La Canzone di Guglielmo~

そは――騎士達の物語。そして――史詩。



ギョームの歌


11


 誉れ高き騎士ヴィヴィアンは言った。
 「こうなることは昨日の晩から私の頭の中でわかっていたのだ。
 テバルドは夕べの祈りから帰ってくるとき酔っぱらっていた。
 今はぐっすりと眠ったことであるし、我々はギョームを待とうではないか」。
 さてその時エストゥルミが群集の間をうろついた末、テバルドのもとへ行き、彼の右手をとった。
 「殿よ、夕べの祈りから帰ってきたときのことを覚えていらっしゃらないのですか?ドラメのことも、悲しい知らせのことも」。
 テバルドは言った。「私はギョームを応援に呼んだっけ?」。
 「いいえ、殿。ですからギョームは間に合いません。
 
 

12


 昨日私があなたに鉤鼻のギョームに応援を求めたらと言ったなら、あなたはそのことで私をののしったでしょう。
 テバルドは答えた。「わかった。そのことはおいておこう」。
 彼は武具を取りに行かせ、それを受け取った。
 家臣らは彼に美しい輝くばかりの胴鎧を着せ、頭には緑に輝く兜をひもで結わえた。
 彼は剣を装備した。そのきれいな刃は地面を向いていた。
 彼は大きな盾の柄を取った。
 右手にはよく切れる投げ槍をもち、地面にとどくほどの白い旗印をひもで結わえた。
 それから彼のところにカスティリヤ産の馬が連れて来られた。
 テバルドは左側の鐙からそれに乗り、城の小問のひとつから出陣した。
 彼の後ろには1万の兜をつけた軍勢がつき、ドラメ王と対決するためアルシャンを目指した。
 テバルドは彼の良き城市を出た。
 彼の後ろには1万の武装した兵がつき、異教徒の王ドラメに立ち向かうためアルシャンへと向かった。
 臆病な領主が彼らを導くことになったのだ。

Lunesdi al vespre(月曜の晩祷に)

 彼らは海を右手に見ながらアルシャンに着いた。
 
 

13


 テバルドは広々とした海を眺め、2万艘の船とその木組みを見た。
 テバルドは言った。「おお、やつらの陣営が見えるぞ」。
 ヴィヴィアンは言った。「いや、そんなことはない、あり得ない。
 あれは岸を目指して近付いてくる艦隊です。もし彼らが船から降りてきたら、その後陣営を張るでしょうが」。
 彼は前へ進み、5百のテントの先と帆桁、キャビンを見たのだった。
 「彼らがそうなのかもしれません」。ヴィヴィアンは言った。
 ベリの領主テバルドは言った。
 「ヴィヴィアン殿、あの丘へ上って、敵の様子をさぐってみなされ。海上にどれだけいて、陸にはどれだけいるかを」。
 ヴィヴィアンは言った。「私に聞かないでください。私は兜を低くして平原まで下り、そこでこの右腕で戦うのです。
 そうしろとかつて我が主ギョームが私に教えたのです。
 陣地を見るために残っているなんてことは、主が許したもうなら、そんなことは絶対しません。
 
 

14


 「テバルド殿」。勇者ヴィヴィアンは言った。
 「あなたはこの海沿いに住む最上の者らのその公だ。誉れも高い。あなたが丘に上りなさい。
 敵が海上にどれだけいて、陸にはどれだけいるか、あなたがそれを見るのです。
 もし彼らと当たっても大丈夫なだけ味方がいるようなら、彼らに向かって馬を駆けさせ、戦いなさい。
 主の恩寵で我々は彼らを打ち負かすでしょう。
 それでもし会戦をするのに人間が少なすぎるようなら、ここに谷がひらけている。
 ここにあなたの軍勢を集めなさい。
 使者を出し、味方になってくれる者を呼び集めなさい。
 鉤鼻のギョームをお忘れなく。
 平原での戦いには非常に手慣れています。
 戦いの展開の仕方(導き方)、勝ち方を知っています。
 もし彼が来れば、我々はドラメを打ち負かすでしょう」。
 テバルドは答えた。「よくぞ言ってくれた」。
 彼は馬に拍車をあて、丘に上った。
 海岸べりの方に目をやり、そこが大船、小舟、ガレー船やら、戦闘帆船でうめつくされているのを見た。
 空は見えたが、陸地は見えなかった。
 恐れのあまり、彼は頭をかかえた。
 彼は上がったところの丘から下り、フランクの陣営まで来て、すべてを伝えた。
 
 

15


 高貴なる一族よ、これからどうなることになろう?
 我々1人につき敵は千人だ。
 今逃げない者は、すぐにも殺されて、地に横たわることになるだろう。
 逃げようではないか。自分の命を救わなければ!」。

 
 



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