Chansons de geste ~La Canzone di Guglielmo~

そは――騎士達の物語。そして――史詩。



ギョームの歌



 「テバルド様、そんなことは考えまするな」。エストゥルミが言った。
 「この地では、どこであっても、異教徒だろうがアラブ人だろうが、誰が来ようが、皆ギョーム候を呼ぶようになっております。
 もし、あなたがここへあなたの2万の兵を連れてきて、ギョームが3人、4人、あるいは5人ほどの、ほんの少しの彼の部下と来るとします。
 それであなたがアラブ人らと戦い、彼らに勝ったとしても、皆がそれをギョーム殿の手柄であると言います。
 誰が彼らに勝とうが、その栄光はいつもギョーム殿のものとされてしまうのです。
 殿、我々で戦いましょう。我々は彼らに勝ちます。保証します。
 ギョームに行くところの誉れをあなたは自分に取っておくことができるのです」。
 「高貴なる一族よ」。ヴィヴィアンが言った。「あなたがたにお願いする。
 こんな小部隊ではアラブ人らに勝つことはできない。
 皆々方、ギョームに応援を呼ぶのです。
 戦いを統べるのに長けた男です。
 もし彼が来れば、我々はアラブ人らに勝つでしょう」。
 エストゥルミは言った。「それは良くない提案だ。
 よそ者らはいつもギョームを讃えるようになっている。
 彼は我々の兵らをおとしめることになるのだ」。
 テバルドは答えた。「ヴィヴィアンは戦いに来るつもりがないからそう言うのだ」。
 
 


 「いや、そうではない」。ヴィヴィアンは言った。
 「自分の母から生まれた者のうちで、この海岸からライン川に至るまで、キリスト教徒の中でもアラブ人の間でも、私ほど大きな戦闘を行える(もたせる)ことのできるものはいない。鉤鼻のギョームを除いては。
 彼は私の叔父であり、私などその足下にも及ばぬ者だ。

Lunesdi al vespre(月曜の晩祷に)

 ギョームの力には私など比ぶべくもない」
 
 


 テバルドは言った。「私のところにワインを持ってきて渡すように。エストゥルミと飲むから。
 明日早暁アラブ人どもを攻撃する。
 七リーグ離れたところからでも叫び声やら、槍の折れる音、硬い盾の割れる音が聞こえることであろう」。
 酒蔵係が彼らにワインを持ってきた。
 テバルドはそれを飲み、エストゥルミにも与えた。
 ヴィヴィアンは自分の宿舎へ寝に帰った。
 
 


 彼らの地から人々が集まってきた。
 夜明けには兜をかぶった者たちの数は一万に達した。
 テバルドは宿舎で朝早い時刻から起き出し、風の吹く方へと窓を開け放った。
 彼は空を見た。が、地面は見えなかった。
 それは胴鎧と兜と汚れた敵なるサラセン人とに覆われていたのだ。
 「主よ」。テバルドは言った。「これはどうしたことだ?」。
 
 

10


 「皆々方、高貴なる者らよ、主の愛にかけてあなたがたにお願いする。
 私がこの領地を支配するようになってからもう18年になる。
 しかしこれほど多くの武装した騎士らを私はかつて見たことがない。
 一寸の動く隙間もないほどだ。
 もしあなたがたが城なり町なりを攻めれば、あなた方が挑んだ相手は悲惨な目にあうだろう。
 あなたがたが荒らしまわった領地は哀れなものとなるだろう。
 ヴィヴィアンは言った。「私は前もってこうなると分かっていたんだ。
 ゆうべテバルドは透明のワインで酔っていた。
 さて、よく眠った後で、今彼の頭は冴えている。
 さあ、鉤鼻のギョームを待とうではないか」。
 夕べにしゃべっていた者は大恥をかき、自慢さえした者はさらに大きな恥をかいたのだった。

 
 



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