Chansons de geste ~La Canzone di Guglielmo~

そは――騎士達の物語。そして――史詩。



ギョームの歌



 さあさあ皆さん、サラセンの王ドラメが、我らが帝ルイに対して仕掛けた、大いなる戦いと激しい衝突について聞きたくはございませんか?
 ギョーム侯が、ドラメに対して、たいそうな力を尽くし、その結果、彼をアルシャンの野で殺したのです。
 ギョームはしばしば異教徒に対して戦いを仕掛け、彼の優れた家臣らを失いました。
 そしてまた、彼の甥である勇敢なヴィヴィアン侯まで失ったのです。
 そのために、ギョームは常に心にたいへんな悲しみをいだくことになりました。

Lunesdi al vespre(月曜の晩祷に)

 さて、ギョームの歌の始まり始まり。
 
 


 
 ドラメ王はコルドバを発ち、その艦隊を沖へと導いた。ジロンド川をさかのぼり、上陸して、その地をひどく略奪した。
 領地を荒らし、荘園を占領し始め、その国から真の聖遺物を奪い取り、勇敢なる騎士らを鎖に繋ぎ連れ去った。
 その災厄はアルシャンにおいてなされた。
 ひとりの騎士が異教徒らのもとから脱出し、そのことをテバルド・ド・ブルジュに告げた。
 ちょうどその時テバルドはそこにいたのだ。
 彼はまさにブルジュで、彼の甥エストゥルミやヴィヴィアン伯、七百の若き騎士らと共に、その使者に会った。
 鎖帷子をまとわぬ者はいなかった。ちょうどそこへその知らせをもって使者が来たのだ。
 
 


 
 テバルド公は夕べの祈りから戻ってくるところで、彼の右手には甥のエストゥルミがいた。
 そしてギョームの勇ましき甥ヴィヴィアンもいた。七百人のその地の騎士らと共に。
 テバルドはこれ以上ないというほどの有頂天で、彼の右手をささえていたエストゥルミも同様だった。
 そこへ知らせをもった使者がやって来た。
 「テバルド様が夕べの祈りから戻るのを主が護り給うよう。
 ドラメのことについて、あなたがたに悪い知らせがあります。
 アルシャンにおいて、おそろしい戦いがあったのです。
 
 


 
 ドラメ王はコルドバを発ち、その艦隊を沖へと導きました。ジロンド川をさかのぼり、上陸して、あなたの地をひどく略奪しました。
 領地を荒らし、荘園を占領し始め、その国から真の聖遺物を奪い取り、あなたの勇敢なる騎士らを鎖に繋ぎ連れ去ってしまいました。
 テバルド様、異教徒らが彼らを連れて行ってしまわないように、御考慮のほどを」。
 
 


 
 「高貴なる一族よ」。テバルドは言った。「我々はどうすべきか?」。
 使者は言った。「我々はすでに戦っているのです」。
 テバルドは尋ねた。「ヴィヴィアン殿、どうすべきであろうか?」。
 勇者は答えた。「もちろん最善を尽くしましょう(直訳:我々は良いことしかしない)、テバルド殿」。
 勇敢なるヴィヴィアンは言った。
 「あなたは伯爵だ。海沿いに住む高貴な者たちから非常に尊敬されている。
 私の言うことに耳を貸しなさい。人に責められるようなことにはならないから。
 あなたが使者を送って、あなたの友人らを呼ぶのです。
 鉤鼻のギョームを呼ぶのをお忘れなく。
 平原の戦いにおいて極めて手練れた戦士です。
 彼は戦いをあやつり、勝つ方法を知っています。
 もし彼が来れば、我々はドラメを打ち負かすでしょう」。
 
 
Lunesdi al vespreを直訳すると、「月曜の夕刻に」となる。この言葉は、歌の(写本の)間に幾度となく現れるが、O写本(オックスフォード写本)『ロランの歌』に見られる「AOI」のごとく、具体的に何を指すのかは不明)



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