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「そして、おれたちはラングルの勇士をふたりながらにして失ったのです。マルシルはふたりを捕らえ、アルチューリの山中で無惨に惨殺し、裏切りの本性を示したではありませんか」
ローランは今でも、時折、勇敢だった彼らの去り際の笑顔を忘れない。大切な友を裏切りと詐術に奪われたことを思えば、ギリギリと奥歯を鳴らしたくなる。
「イスパンヤ攻略は目前です。すでに残るはサラゴッサのマルシルのみであれば、戦を続けるべきです。麾下の軍勢をサラゴッサへさし向け、全軍全力をあげて包囲し、ふたりの……いや、これまでの度重なる奸計にてヤツに殺された友らの仇を討つのです」
 ローランの語気は荒い。若さゆえと言い切れぬ激しさはこの若者の魅力でもあり、欠点でもあった。復讐という感情優先の発言に説得力は、ない。
 たとえ、説得力を発揮したとしても、そこにある計略は力押し以外のなにものでもなく、シャルル王の肯首はなかった。
 思案の余地はある。たしかに、サラゴッサの城を落とせば遠征の目的は果たされる。しかし、それには綿密な策略が不可欠となるのだ。

抜粋/ローランの歌







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