シャルルの代わりに、誰かがガヌロンを指名しなければならない。
「死にに行け」と宣告しなければならない。
ただ、ガヌロンであれば知略も体躯も優れており、万が一の事があったとしても包囲を突いて己ひとり分くらいは血路を開く実力がある。ドゥーズ・ペールほどの武技を持たぬとはいえ、かつてはローランに手ほどきをした程の男であった。
オリヴィエが、ローランをちらりと見て沈鬱に俯いた。
ローランは継父を決して嫌ってはいない。王によって見出され宮廷に登ってから、ガヌロンはシャルルの命にてローランを養育してきた。むしろ、信頼し一方では心を砕いている。そのローランが、一度唇を引き結んでからシャルルを見つめた。
わずかな仕草で視線を逸らすシャルルの面もちの中にローランは心を決めた。……今、王のために、と。
「義父上を!ガヌロンを推挙します!」
抜粋/ローランの歌(使者)