諸将のいらえを待たず、シャルル王の重ねての問いかけを待ちきれず、立ち上がったのは辺境伯ローランだった。
「おれを行かせて下さい!」
「君は絶対行くな」
ローランの勢い込んだ声に打てば響くようなタイミングでオリヴィエが制止する。
「君は豪毅で短気だから、何を起こすかわからないだろう?かえって喧嘩沙汰にしてしまって面倒を起こすことは火を見るより明らかだ。ローランを行かせるくらいならば、わたしが行って穏便に事を進めてご覧に入れます」
「君の方が交渉は巧いだろうけれど、おれが行けば、一言で黙らせて帰ってくる。君を行かせるくらいなら、おれが行く」
この場で言い争いすら始めそうなローランの様子と、大仰に溜息をついて説得しようとしたオリヴィエの次の言葉を待たずに、シャルル王がふたりを制する。
「両名とも、控えよ。無駄口を閉じて座って聞け。オリヴィエもローランも二度とサラゴッスへ行ってはならぬ。偵察でもだ。諸将とも、わたしを見よ。わたしの誇りにかけて、いずれも十二臣将の面々を指名することは許さぬ」
抜粋/ローランの歌(使者)